企業が進化する
~驚きと成果が詰まった
オープンイノベーションの実例~
<目次>
オープンイノベーションは既にスタンダードに
―その加速は止まらない―
オープンイノベーションの流れはすでに始まっています。今では、政府や大手コンサル企業も参入しています。また、オープンイノベーションに参加したい企業のマッチングを専門に行う企業も出てきています。
1つ前の記事では「オープンイノベーションとは?」について記載しています。そちらもご確認くださると、より深い理解につながります。
⇩前編の記事リンク
ビジョンの共創 〜オープンイノベーションの課題とメリット〜 – MAGAZINE – InnoLaboNIIGATA 〜イノラボニイガタ〜 (innolabo-niigata.com)
以下では、オープンイノベーションの事例を紹介します。
日本政府の事例
日本政府は民間のオープンイノベーションの活性化させるための組織を2016年より創設しました。その目的は以下の通りです。また、その会員も年々増えています。
民間事業者の「オープンイノベーション」の取組みを推進するとともに、「ベンチャー宣言」を実現することで、我が国産業のイノベーションの創出及び競争力の強化に寄与する活動を行います。
<出典>JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会:NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
<出典>JOICの現状
政府はどんな課題を感じている?
日本政府は、世界でも渡り合える事業を育成するためにも、オープンイノベーションを重視しています。
我が国におけるオープンイノベーションの推進に向けて 国際競争が激化し、世界的にオープンイノベーションの取り組みが拡⼤する中、我が国が技術をベースにしたイノベーションでグローバル市場をリードするためには、⾰新的な技術シーズの創出に加えて、外部の技術・アイデア・資源を活⽤するオープンイノベーションの推進により、新製品や新たなビジネスモデルの創出に繋げていく必要があります。 このため、産業界有志により、オープンイノベーションの更なる深化と拡⼤に向け、本協議会が設⽴される運びとなりました。(中略)本協議会は、企業のオープンイノベーションの機会を拡⼤し、ベンチャー企業の研究能⼒を活⽤する場として機能することが期待されています。
<出典>JOICの活動
また、大学などに蓄積された知識を、ビジネスやオープンイノベーションという形で社会に供給するべきだという課題感もあるようです。そのため、これらを解決するための活動を通して大学発のベンチャーや、産学連携を推進するねらいもあります。
政府の取り組み
オープンイノベーションの活性化のために政府が実施しているのは以下の内容です
- ・日本ベンチャー大賞
- ・新事業創造カンファレンス
- ・オープンイノベーションに関するセミナー
- ・既存企業発ベンチャー創造
- ・ベンチャー企業の創造起業家教育の推進
<出典>JOICの活動
大手コンサル
Six Brain(シックスブレイン)
こちらはデロイトトーマツが運営している事業になります。同社は次のような理念を掲げています。
すべては、挑戦する人のために。Turning point for Challengers.
sixbrainは、スタートアップ企業のためのオープンイノベーションプラットフォーム。
登録したスタートアップ企業は、大手企業からの本気の協業オファーが受け取れます。
これからのビジネスに、これからのソリューションを。
大手コンサルの事例
同社の実績事例として、広島県からの委託された「ひろしまサンドボックス フィールドチャレンジ事業」があります。
その目的は
広島県では、地域におけるデジタル技術を試すことができる環境の整備や、全国から人材の呼び込みを目的としたオープンな実証実験の場として「ひろしまサンドボックス」を構築しています。広島県には、農家の高齢化や、空き家、交通手段の分断、ITインフラ整備の支援不足など、AI/IoTの活用による解決が求められている地域課題のフィールドが様々な分野にあります。そこで今年度はDTVSが提供しているsix brainを自治体として初めて活用し、日本全国のスタートアップと市町等とのマッチングをリモートで実現することで、地域発のイノベーションの創出と課題解決の加速を目指します。
<出典>広島県内の市町とスタートアップのオンラインマッチングを含む「ひろしまサンドボックス フィールドチャレンジ事業」 (deloitte.com)
その結果、いくつかの事業が採択され、実装に向かっています。
最終的に採択された20の事業のうち、いくつか抜粋して紹介します。
分野 | ソリューション一覧 | 実装事業者(事業開発者) |
ものづくり | IoT で製造業を Update ! スマート工場ソリューション「つながるスマートものづくり」 | 広機工㈱ 他 5 者 ○(デジタルソリューション㈱) |
医療・ヘルスケア | ピロリ菌検査キットによる胃炎・胃がん予防 医療の普及「ピロリバスター!」 | ㈱ E.S CONSULTING GROUP 他 3 者 |
農林水産 | 貨客混載による中小ロット物流構築,地域でつくる・つながる食の流通 DX「やさいバス」 | アグリプロデュース㈱ (やさいバス㈱) |
<出典>
ひろしまサンドボックス実装支援事業 採択結果 (hiroshima-sandbox.jp)
実装支援事業|ひろしまサンドボックス|HIROSHIMA SANDBOX (hiroshima-sandbox.jp)
この中で、既に事業として動き始めている事業の1つは「やさいバス」です。
この事業は2024年問題などに起因する物流システムの崩壊が謳われる今のご時世において、既存の仕組みを上手く活用した事例になります。
人と野菜が一緒に乗る「やさいバス」
やさいバスはその名の通り、各生産地を“停留所”として、出荷する野菜を載せてスーパーなどの売り場近くまで運んでいます。生産者にとっては新しい販路のひとつに、店舗にとっては収穫直後の新鮮な地元野菜を仕入れる手段となります。
そして“停留所”を周るバスには、「やさいバス」専用チャーター便と、路線バスを利用した貨客混載便があります。
貨客混載便では、路線バスのバス停で乗客とともに野菜を載せて、出発進行!目的地の売り場近くのバス停まで、野菜と人が一緒に乗って行きます。
<出典>
人も野菜も、バス停に集合!?貨客混載の「やさいバス」【実装支援事業】|ひろしまサンドボックス【公式】 (note.com)
事業成長支援会社
事業成長支援会社が生まれた背景
従来の環境では「オープンイノベーションのパートナー探し」が大きな難点でした。
仮にオープンイノベーションを実施しようにも「その提携先」を募集する場所がほとんどありませんでした。自社HPなどの媒体では、見る人がかなり限られます。SNSで発信しようにも、その他の大量の情報で埋もれてしまいます。
おそらく、これまでは営業や重役が他社の社員と話した時に、偶然生まれたものがほとんどだったと考えられます。
それを解決するプラットフォームの役割を果たそうとしているのが事業支援会社です。
加えて、政府がオープンイノベーションを促進するエコシステムを作りたいという流れもあり、国や自治体からの後押しを受けている企業も存在します。
詳しくは政府資料から確認できます。
【オープン・イノベーションの推進| 成長戦略ポータルサイト (kantei.go.jp)】
「グローバルな世界でも戦えるビジネスを育てるために、オープンイノベーションのための人・資金・知識が集まるエコシステムをつくりたい」
その実現のために官民が連携しており、それを加速させる取り組みが支援事業会社とも言えます。その中には、上記で紹介したような大手コンサルが主導してつくりあげている事例も存在します。その他の事業成長支援会社の例としては以下のような企業があります。
Creww株式会社
Crewwは「大挑戦時代をつくる。」をビジョンに掲げ、GrowthTech領域におけるプラットフォームを運営しています。国内トップクラスを誇るオープンイノベーションプログラムの開催や、事業や個人の挑戦を応援するスタートアップスタジオなど、”事業会社・スタートアップ・個人”の多様なニーズに対応したサービスを展開しています。
<出典>Creww(クルー) – 大挑戦時代をつくる。オープンイノベーション支援プラットフォーム|Creww
<参考元>業界別!オープンイノベーションを推進する企業20選 | PORT (creww.me)
導入事例
以下では、実際にオープンイノベーションを導入した企業と、その企業がどのような取り組みをしているかを紹介します。オープンイノベーションは国内でも、さらには宇宙空間でも広がりを見せています。また、新潟県でもその事例が存在します。
KDDI株式会社
同社は、有望スタートアップが選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング2023」で6年連続1位を受賞している実績もあります。
そのKDDIが行っているオープンイノベーション事業は主に以下の2つです。
「KDDI Open Innovation Fund」「KDDI ∞ Labo(無限ラボ)」
「イノベーティブ大企業ランキング」について、詳しくはこちらからご確認ください。
- 有望スタートアップ企業が選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング2022」 結果を発表! | PORT (creww.me)
- 有望スタートアップが選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング2023」で6年連続1位を受賞 | 2023年 | KDDI株式会社
- Innovation Leaders Summit (ils.tokyo)
「KDDI Open Innovation Fund」
➡国内外のスタートアップ企業への出資を行う
以下はその支援実績の一部抜粋です。
支援先企業 | 会社概要 | HPリンク |
株式会社Modhaus | Web3プラットフォーム「COSMO」を運営している芸能プロダクション | Modhaus (mod-haus.com) |
株式会社BitStar | 独自データとテクノロジーを活用したソーシャルメディアマーケティング事業、D2C事業を展開 | 株式会社BitStar (ビットスター) |
株式会社Light | Web3.0の技術を活用した次世代ライブ配信プラットフォーム「palmu」の運用 | Light (light-inc.com) |
詳しくはこのリンクから⇩
KDDI Open Innovation Fund|KDDI Open Innovation Program | KDDI株式会社
「KDDI ∞ Labo(無限ラボ)」
➡事業共創プラットフォーム
こちらでは、大企業各社がスタートアップの力を借りて解決したい課題と、それに伴いスタートアップへ提供可能なアセット(価値)を公開しています。
KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)は
スタートアップのビジネスアイディアやテクノロジーと、
KDDI ∞ Laboに参画する多様な大企業のアセットを連携させて、
社会にインパクトのある新たな事業を共に創出します。<出典>KDDI ∞ Labo|KDDI Open Innovation Program | KDDI株式会社
パートナー連合企業とその課題・アセット(一部抜粋)
パートナー企業 | 課題 | アセット |
(株)アミューズ | ・メタバース・NFTをはじめとしたWeb3領域での新たなIPの創出 ・スマートコントラクトの作成、3Dグラフィックスの制作など、新たな領域に必要とされる技術を持った人材の確保、もしくはチームとの連携 | • アミューズグループのIPやコンテンツとの連携機会 |
グーグルクラウドジャパン合同会社 | • スタートアップのイノベーションを支援する「Google for Startups」の認知度向上と「Google for Startups クラウドプログラム」の利用促進 | Google for Startups クラウド プログラム |
(株)静岡銀行 | [1] スタートアップ企業や異業種との連携による地域課題の解決につながる新規事業の創出 [2] 銀行取引先の大企業やスタートアップとの新事業創出とそれに伴う成長支援資金の投資機会拡大 [3] 静岡でのベンチャー・エコシステム形成に向けたネットワーク構築 …等々 | [2] ファンドによるエクイティファイナンス、資金調達支援、銀行紹介などの連携 [3] 銀行本体によるベンチャーデット 創業者に対する資産形成やローン相談 Tech Beat Shizuoka(静岡県内企業とスタートアップのマッチングイベント) …等々 |
オープンイノベーションの流れは国内に留まらず、宇宙空間まで波及しています!
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
「AVATAR Xプログラム」
➡宇宙開発・宇宙関連事業の創出
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とavatarin株式会社は、アバター技術(遠隔存在技術)を活用した宇宙開発・宇宙関連事業の創出を目指す「AVATAR Xプログラム」を立ち上げ、大分県をはじめとする約35社による産官学連携によるコンソーシアムを発足。 宇宙航空分野のみならず異分野やスタートアップも含めた連携を実施。
2020年には宇宙および地上でアバター実証を実施し、コロナ禍における幅広い分野で社会的ニーズに貢献しました。
今後も宇宙関連ビジネスにとどまることなく、地上での社会課題解決に貢献することが期待されています。
<出典>オープンイノベーションとは? 日本における現状や成功事例を紹介 | コラム | Daily Topics | イノベーション(Yume Pro) | OKI
<出典>AVATAR X – 新たな移動手段による、新たな宇宙開発・利用の創出へ – (avatarin.com) HPより引用
新潟県でもオープンイノベーションの流れが広がり始めています!
テレビ新潟放送網
「WAVE」
➡DX新規事業開発支援事業
株式会社テレビ新潟放送網(本社:新潟県新潟市、代表取締役社⻑:正力源一郎)とSocialups株式会社(本社:新潟県新潟市、代表取締役社⻑:髙瀬章充)が共同して、新潟市のDX新規事業開発支援事業を受託し、企業と共創パートナー人材に向けた新事業共創プログラム**「WAVE」**を2023年7月より運営します。
最後に
オープンイノベーションを取り巻く日本の環境について紹介しました。今回ご紹介した導入事例以外にも多数の事業があります。成功事例もあれば、その裏には失敗事例も多数存在します。
ですが、変化の激しい時代においては「挑戦すること自体に大きな価値がある」という思いに共感していただけると嬉しいです。
ゼネラルモーターズ(GM)の元CEO、スローンJrは、書籍『GMとともに』でこのような言葉を残しています。
アルフレッド・P・スローンJr.
“価値のあること、それも新しいことや今までにないことに挑戦する者は、それに伴う壁を乗り越える気概や野心を持たなくてはならない”