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健康産業の先駆け!北信越で躍進するスタートアップ企業

レポート

健康産業の先駆け!北信越で躍進するスタートアップ企業

人生100年時代と私たちの健康は切っても切り離せない関係にあります。そのような背景もあり、健康促進や企業による健康経営は「社会課題」となっています。
以下では、健康問題が社会課題化している背景を明らかにし、その解決のために尽力している北信越地域で活躍しているスタートアップ企業を紹介します。

 

健康改善の大切さ

もし、自分や周りの社員が

・頭の回転が速くなって、仕事の要領が良くなる
・集中力・判断力・創造力がアップする
・モチベーションがアップする
・ストレス耐性が向上する
・感情や気分が安定する

ようになったら、どうでしょうか?
自分や自分たちの組織は「何だってできるぞ!」という感覚が生まれてきませんか?
そんな魔法のようなことを実現するのに必要なのは「健康な生活」です。
そのためには、食事・睡眠・運動の改善が不可欠です。

 

健康改善しなかった場合

逆に、不健康な生活を続けた場合はどうなるのでしょうか?
具体的には、死亡リスクの上昇、脳機能の低下などが起こります。

 

1. 不健康な食事があなたを蝕む

死亡した人の5人に1人が不健康な食事を原因とし、その影響は高血圧や喫煙よりも深刻です。また、不健康な食事が原因で、世界で年間に1,100万人が死亡しているという調査結果が発表されました。

帰り道のコンビニでの買い食いや、カップラーメンなどの加工食品があなたの健康な心身を蝕んでいきます。

<参考文献>
5人に1人が「不健康な食事」が原因で死亡 たばこや高血圧より深刻 食事改善で命を救える | ニュース | 保健指導リソースガイド (tokuteikenshin-hokensidou.jp)

 

2. 「運動不足」は死亡リスクを上げる

・世界では運動不足で死亡している人たちが10%(日本人は16%)
・ほとんど運動しない人たちに対して、毎日40分激しい運動をすると50%近く、中等度の運動でも1時間で30%死亡率を減らすことができる。

また、運動不足は肥満にもつながります。肥満は炎症のもとであり、体の不調を引き起こす原因となりやすいです。

<参考文献>
日本人の死因16%に「運動不足」が影響、という衝撃 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

3. 座りっぱなしが寿命を縮める

・座りっぱなしの状態では1時間ごとに寿命が22分間短くなる
・座り続けたことによるデメリットは、あとから運動しても取り戻せない
・座り続けると、認知能力や集中力も低下して仕事のパフォーマンスも下げる

多くの企業は就業時間が8時間です。その間ずっと座り続けていた場合、約2時間の寿命が縮むことになります。そして、多くの人はこの寿命を縮める行動を週5日行っています。
長い目でみると、座り続けることでどのぐらいの寿命が縮むのでしょうか?

1週間で約10時間
1か月で約40時間
1年で約480時間(約20日分!)

座り続けることで、あなたの寿命は確実に縮んでいきます。また、老後を健康に過ごせる期間である健康寿命を縮めることにもなります。座り続ける時間が長くなるほど、老後寝たきり状態になる時間が長くなるでしょう。

<参考文献>
スポーツで頭がよくなる? 最新脳科学が解き明かした、スポーツと脳の意外な関係 | パラサポWEB (parasapo.tokyo)

 

個人に任せるのでは不十分な理由

ここまで、「健康でいる恩恵」と「不健康のリスク」をみてきました。
メリットとデメリットが明らかであれば多くの人が行動できそうですが、
実際に行動できないからこそ社会問題となっています。
それは、人間には簡単に自分を変えられない性質があるからです。

 

1. 現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、状況がよくなるかもしれないのに、変わったり新しいことを避けて、今のままを守りたい気持ちを指します。

「今年こそは英語学習をしよう」
「去年は挫折したけども、今年はジムに通うぞ!」

そう思ったにも関わらず、結局挫折してしまった・うやむやになってしまった経験はありませんか?これは、現状維持バイアスが大きな原因の1つであり、「わかっていてもできない」につながります。

<参考文献>
現状維持バイアスとは?原因や克服のポイント、ビジネスへの活用方法を紹介 | Musubuライブラリ

 

2. 正常性バイアス

正常性バイアスとは、危険や脅威が迫っていることを示す情報に対して、過小評価してしまう傾向のことです。
例えば、 「健康診断の結果が少し悪いが、自分は大丈夫だろう」 「よはど運が悪くなければ、重病にはならないだろう」と考えてしまい、予防や備えを怠ってしまうことを指します。

<参考文献>
【正常性バイアスとは】例・原因・対策をわかりやすく解説|リベラルアーツガイド (liberal-arts-guide.com)

 

健康課題の解決を行う企業

健康でいることのメリットは計り知れません。
一方で、不健康でいることによる代償は高くつきます。しかし、これまで見てきたように「個人の努力や意志」に頼るには限界があります。このような背景から、健康推進は「社会課題」となっています。その社会課題を解決するため、政府・企業は様々な努力をしています。

 

政府・企業による推進事例

政府も「スポーツエールカンパニー」という制度をつくり、健康経営を実施する企業を増やそうとしています。

・ヤフー株式会社: 全社員を対象にweb会議システム「Zoom」を活用した毎日のラジオ体操・ストレッチ講座の提供を行っています。

・花王株式会社: 社内クラブ・同好会を通じて、様々なジャンルのスポーツ活動を推奨しています。運動だけでなく、社員のコミュニケーションの場としても活用されています。

<詳細はこちらから>
「スポーツエールカンパニー2023」認定を追加:スポーツ庁 (mext.go.jp)
健康経営は、将来に向けた投資。メリットと実践ポイントを詳しく解説 – RELO総務人事タイムズ (reloclub.jp)

 

健康課題の解決を行うスタートアップ

企業の健康経営を促進することを事業としている企業も存在します。以下では、北信越地域で活躍している健康推進に携わっているスタートアップを紹介します。

 

【企業1】株式会社 ネックレス(長野県)

会社HP:株式会社ネックレス – やさしさが好循環する社会へ (neckless.co.jp)

何をしている会社?

福利厚生費で計上できるオフィスリラクゼーションサービスで、長野県内の企業や団体のオフィスや工場等へスタッフが出張して施術を行っています。社員様の体と心の両輪を健康に保ち、仕事のパフォーマンスを最大限まで高めるためのリフレッシュ時間を提供している会社です。

 


<出典>株式会社ネックレス – やさしさが好循環する社会へ (neckless.co.jp)

 

この企業は「信州アクセラレーションプログラム」(長野県内の短期集中伴走支援プログラム)にも選出されています。

⇩詳しくはこちらから
信州アクセラレーションプログラム過去の採択企業/長野県 (nagano.lg.jp)

事業内容は?
(1)企業出張専門リラクゼーションサービス「癒しラボ」の提供
(2)健康経営伴走サポート
(3)もみほぐしボディケア TUKANOMA(つかのま)の運営

特筆コメント!

仕事に追われる日々が続くと、ついつい自分を労らう時間をとることを忘れがちです。そのような生活は短期的には続いても、長期間続けることで燃え尽き症候群の原因ともなります。仕事へのやる気も次第に失せていくことにもつながります。
だからこそ、会社が制度としてオフィスリラクゼーションを取り入れ、社員が利用できる環境を整えることは、健康経営を促進する上で大きな意義があります。また、会社で施術を受けられることで、お店に行くことが億劫となり、結局利用しなくなることを防げます。旅行やリゾート施設と比べて手軽である点も、利用率向上につながります。
このような事例は、自社の福利厚生を今一度見直し、社員の自主性に任せた福利厚生制度を考え直す良いきっかけとなるでしょう。

 

【企業2】株式会社アイセック(新潟県)

会社HP:https://iseq.co.jp/

何をしている会社?

企業・自治体を対象とした、データ分析をもとに次の世代に継承していく科学的エビデンスを確⽴し、⻑寿で健康な⽣活と環境の質の向上を目指す会社です。主に健康データの分析と、分析結果に基づくコンサルを行っています。
こちらの会社は新潟大学発ベンチャーの1つです。

⇩詳しくはこちらから
大学発ベンチャー認定 | 新潟大学 社会連携推進機構 (niigata-u.ac.jp)

事業内容は?
(1) 健康医療データ分析とその支援
(2)オンライン健康教育
(3)健康経営推進のための支援
(4)オンラインでの健康相談
(5)健康管理データベースシステム・健康サーベイ

<出典>健康教育 | 株式会社アイセック (iSEQ.inc)

特筆コメント!

「人生100年時代」ということもあり、健康は私たちと密接に関わっている問題です。しかし、ネットで健康について扱っている情報は、科学的知見に基づいたものもあれば、個人の体験を根拠とした真偽が怪しいものなど、玉石混交な状態です。特に、ダイエットの情報がその典型例です…。

だからこそ、データや科学的根拠に基づいた健康推進を提供していることは大きな意義があります。導入する会社としても、再現性の高く費用対効果が大きい成果を期待しやすいでしょう。

また、健康経営を促進する事業をしていることもあり、アイセック自身も健康経営が進んでいます。実際に、同社は令和4年3月9日付で健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)の上位500法人である「ブライト500」に認定されました。

確かな根拠と実績があり、安心感が高いことも特徴の1つです。

 

【企業3】株式会社ウェルナス(長野県)

会社HP:会社概要|株式会社ウェルナス (wellnas.biz)

何をしている会社?

「食」で実効的な健康を届けるという理念のもと、革新的な「未来の食」を創るヘルス・フードテックベンチャーです。こちらの会社は信州大学発ベンチャーの1つです。

⇩詳しくはこちらから
信州大学発ベンチャー認定企業(2022年10月現在)|ベンチャー支援|SUIRLO(サイロ)- 信州大学 学術研究・産学官連携推進機構 – (shinshu-u.ac.jp)

事業内容は?
(1)AI食技術搭載個別栄養最適食(AI食)サービス「NEWTRISH」
(2)ナスのサプリメントを開発:新規機能性成分「コリンエステル」の実用化
(3)機能性表示食品の届出を支援

特筆コメント!

どんなに科学的に良いとされている食事でも、個人差によるばらつきがあります。これと近い事例はスキンケアです。人によっては効果がでたり、効果がでなかったりすることがあります。

そのため、個人に完全に合わせたAIによるレシピの提案は健康を促進する上で大きな助けになります。食事は一生ものの投資となります。体質から生活習慣まで、完全に自分『だけ』のために考えられた「AI食」では、塩分や脂肪を控える必要や、極端に行動を変える必要もない。 まさに、魔法です。

また、ナスに含まれるコリンエステルは少ない用量で交感神経活動を抑制し、さまざまなリラックス作用があるそうです。ナスにそんな効能があるとは驚きでした。

 

【企業4】株式会社スキノス(長野県)

会社HP:株式会社スキノス (skinos.co.jp)

何をしている会社?

学術的に裏付けられた唯一信頼性の高い発汗計測技術で人々の健康的で豊かな生活の実現に貢献している会社です。こちらの会社は信州大学発ベンチャーの1つです。

⇩詳しくはこちらから
信州大学発ベンチャー認定企業(2022年10月現在)|ベンチャー支援|SUIRLO(サイロ)- 信州大学 学術研究・産学官連携推進機構 – (shinshu-u.ac.jp)

事業内容は?
(1)発汗測定技術の研究・開発
(2)発汗測定技術を用いた医療・研究用製品の開発・販売
(3)ソリューション開発
(4)熱中症対策デバイスの実用化

発汗センサを内蔵した腕時計型熱中症対策デバイス

<出典>ソリューション開発 | 株式会社スキノス (skinos.co.jp)

特筆コメント!

汗とストレスは密接に結びついています。職場で装着することで、社員のストレス源を特定できれば、マネジメントの質を向上させることができそうです。社員自身も、自分が知らず知らずのうちにストレスを感じていることの把握につながるでしょう。

また、夏場に建設現場で働く方・イベント運営スタッフ、さらには部活動を行う学生にも役立ちそうです。実用化されることで、社員の安全性への配慮がより高まるでしょう。

 

まとめ

本記事では北信越地域健康課題解決のために活躍しているスタートアップを紹介しました。今回紹介した企業は、AIを活用したデータ分析、大学の研究成果を事業化などを行っています。我流ではなく、エビデンスに基づいた取り組みが主流となっています。

健康経営の促進を「国も都市部でもまだやってないし…」と後回しにしていては、前に進みません。そのような状態が、まさに現状維持バイアス・正常性バイアスです。

今こそ、人生100年時代に合わせた就業環境とは何か、企業の在り方を再考してみませんか?

 

<参考・関連図書>
スポーツで頭がよくなる? 最新脳科学が解き明かした、スポーツと脳の意外な関係 | パラサポWEB (parasapo.tokyo)
なぜ運動で頭が良くなるのか。最新研究でわかってきた“すごい”効果 | Tarzan Web(ターザンウェブ)
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