地域パートナー企業紹介 #17 小柳建設株式会社

地域パートナー企業紹介 #17 小柳建設株式会社
【会社概要】
小柳建設株式会社
創業:1945年11月
本社:〒955-0047 新潟県三条市東三条1丁目21番5号
従業員数:229名(2025年4月時点)
HP:https://n-oyanagi.com/
主な事業
・土木事業
・建築事業
・舗装事業
・埋蔵文化財支援事業
・浚渫事業
・Holostruction事業(MR技術活用ソリューション)
【今回インタビューに答えてくれたのは・・・】
和田 博司さん
小柳建設株式会社 経営管理本部 本部長 (CIO)兼 innovation推進部 部長
2015年、小柳建設に入社。社内システムのフルクラウド化やMicrosoft 365の導入、Holostruction事業のプロジェクトマネジメント(PMO/PO)を担当。現在は経営管理本部長として総務部、経理部、システム部門を統括し、Microsoft Base Niigata-Kamo(加茂オフィス)の運営も行う。
(以下、インタビュー形式で掲載)
―御社の事業内容について教えてください。
三条市に本社を置く、今年で創業80周年を迎えた建設会社です。土木事業と建築事業を中心に、舗装や埋蔵文化財支援事業など多岐にわたって建設事業を展開しております。
その中でも特徴的なのが、*浚渫事業と、Holostruction事業です。これらが他社と比べて差別化されているポイントであり、当社の強みでもあると考えています。
浚渫事業は全国各地で環境保全や防災を目的としており、皇居のお堀にも当社独自の技術が採用されています。また、建設会社でありながら複合現実(MR)の技術を活用したHolostructionという事業を展開し、ソリューション開発事業に力を入れています。
*浚渫(しゅんせつ)事業:河川や湖沼に沈積した土砂を取り除く土木工事の一種。
―直近で一番新しい事業や取り組みについて教えてください。
新しい取り組みとしては、2021年にスタートした「Microsoft Base Niigata-Kamo」です。、Microsoft Baseとは、日本マイクロソフトが提供するMicrosoft製品を活用し、お客様のデジタルトランスフォーメーションを実現する新しい取り組みです。“Base = 発信基地”として物理拠点が全国に展開されています。当社が運営するMicrosoft Base Niigata-Kamo では、最新テクノロジーを使った取り組み事例をはじめとした情報提供や、実際に最新テクノロジーを体験できる機会を提供しているのが大きな特徴です。視察の受け入れも積極的に行っており、合計すると毎年だいたい500社、1000名以上の方に来訪いただいたり、学校への出前授業なども実施しています。
DXを含めた働き方改革にも力を入れており、例えば禁煙手当やiDeCo+の導入、最近では生理痛の体験研修など、北陸地方で初めて取り組んだものもあります。こうした取り組みが評価され、厚生労働省による「プラチナくるみんプラス」「プラチナえるぼし」「ユースエール」の3つの認定を全国の建設業で唯一、同時に取得することができました。
また、今年は日本HRチャレンジ大賞の地方活性賞を受賞することができ、働き方の取り組みについてもよく視察に来られています。
https://www.hrpro.co.jp/award/challenge/
―そういった取り組みに注力されようと思われたきっかけは何ですか?
基本的には弊社のパーパス、経営理念を実現するためです。建設会社として、建設業のイメージがいまだに3K(きつい、汚い、危険)のイメージが根強いことを受けて、それを新4K(給料、休日、希望、カッコイイ)というイメージに変えたいと考えています。
これは国の施策でもあり、そこに追随していくのが弊社の使命でもあります。”変化を楽しもう。”という企業メッセージを掲げ、変化の激しい時代だからこそ、変化も一緒に楽しみながら進めていくという風土が醸成されています。
―スタートアップとの連携事例はありますか?InnoLaboNIIGATAへの参加を通して期待していることは何ですか?
連携事例はまだそれほど多くありませんが、InnoLaboNIIGATAに参加させてもらってから、連携可能性のありそうな数社と打ち合わせを重ねています。どちらかというと、自社の課題解決や業界の課題解決を視野に、スタートアップ企業が提供しているサービスをどう活用していこうかという観点で取り組んでいます。
また、弊社の働き方などの取り組みが注目されているので、課題やニーズを聞きたいというスタートアップ企業からの相談も非常に多く、ウェブや対面でのヒアリングを頻繁に受けています。定例会に参加する度に1、2社くらいはお声掛けをいただいて、お話を聞くようにしています。
―今後、スタートアップと一緒に特に注力して取り組んでいきたいことは何ですか?
特に興味があるのは、人材育成やリスキリング、教育コンテンツの分野と、Holostruction事業やソリューション開発事業の拡充を促進できる技術を持つスタートアップです。スタートアップ企業から、自社や地域の課題を解決するためのヒント・考え方をあらたに学びたいと考えています。
基本的にオープンな姿勢で、Microsoft Baseに視察に来られる方にも、自分たちが使っていて良いものは積極的に紹介しています。ここに来て私たちの取組みを真似してもらう企業が増えれば一番良いと考えていて、それが業界自体の活性化につながってくれるとうれしいです。建設業の3Kイメージの払拭は、弊社だけでやっても変わらないので、他の企業にも積極的に真似してもらえるような活動をしています。
Holostructionも、最初から販売ありきではなく、自分たちが困っているから作ったというのが正しいですね。「弊社の社員の負担を少しでも軽減したい」という課題感から入っていくと、自分たちが欲しいものをソリューションとして形にできます。弊社の課題は業界全体の課題でもあるので、周りの企業ともリンクしやすいと考えています。
―新しい取り組みに対する社内の雰囲気はいかがですか?
環境は準備しますが、システム部門から「これを使いなさい」と強制することはありません。ただ、テクノロジーを使うと効率的で生産性が必ず上がります。生産性が上がって成果を出せると、それが人事評価につながり、結果としてお給料が上がるので、「使わないよりは使った方が得だ」という考えが社内に根付いています。
個々で目標設定をして、それがしっかり達成できたかどうかで評価し、成果を出し続けていれば目標設定も高くなっていきます。日常的に社員同士でどういうツールをどのように使っているかを共有し合うことで、自発的に新しいことに取り組む雰囲気ができています。
―御社からスタートアップに提供できるアセットは何ですか?
社内のスペース・設備(大きな会議室、階段型のプレゼンスペースなど)ではセミナーができるような環境が整っているので、セミナーや配信に活用いただけます。Microsoft Baseのコワーキングスペースもあります。
また、「まずはやってみる」風土があるので、PoC(概念実証)や実証実験は、お互いに目的が合致すればできるというのもアセットとして提供できると考えています。
―和田さんが描く「新潟の未来」について教えてください。
地方に戻ってきたからこそかもしれませんが、地方創生×建設DX×人材育成が組み合わさったモデルになれたらいいなと思っています。新潟にはそういうポテンシャルがあると考えています。
建設業は「地域の未来を作る産業」だと思っているので、弊社としてはそこに貢献していきたいですね。働くという部分ではテクノロジーが発展して、都市部と遜色のない働き方ができると思います。たしかに東京や都市部はマーケットサイズや様々な業界の集積という魅力、ビジネスチャンスがありますが、そういった格差もだんだん少なくなっていくのではないでしょうか。人材の流出が止まって、地域に人が戻ってきたり流入したりすることで、より新潟が豊かになると思っています。
実際、ここ何年かは新潟に縁もゆかりもない新卒社員が半分近く入社しています。”変化を楽しもう。”という考え方に共感したり、「(働き方などの面で)こんな建設会社があるんですね」と驚いて入社してくれる方が多いです。
―最後に、スタートアップに向けてメッセージをお願いします。
業界や地域、自社の課題解決をしていくために、スタートアップの皆さんの新しい考え方やテクノロジーをご教示いただきたいというのが一番大きな期待です。
弊社は建設業ですが、建設業だけでなく、この新潟という地域の課題をテクノロジーやスタートアップの力を使って解決し、持続可能な社会にしていくこともひとつの目標となっています。スタートアップの柔軟な発想やスピード感を活かして、一緒に力を貸していただけたらと思います。
いろいろな考え方やテクノロジーを知ることが様々な課題解決につながると思うので、それを一つでも形にして、建設業界や新潟という地域に波及していく。そういう役割を担っていけたらと考えています。
【事務局からひとこと】
“変化を楽しもう。”という企業メッセージを軸に、80年の歴史を持ちながらも常に新しいことにチャレンジし続ける和田さん。DXによる働き方改革で建設業界のイメージを変革し、新潟から全国に先進事例を発信する小柳建設との事業連携に興味のあるスタートアップはこちらまで!
2025年7月16日取材
取材・編集 井上佳純
撮影 笹田倫子