地域パートナー企業紹介 #18 株式会社BSNメディアホールディングス

<目次>
地域パートナー企業紹介 #18 株式会社BSNメディアホールディングス
【会社概要】
株式会社BSNメディアホールディングス
設立:1952年10月
(2023年6月1日「株式会社BSNメディアホールディングス」に商号を変更)
本社:〒951-8655 新潟市中央区川岸町3丁目18番地
従業員数: 連結1,097人(2025年3月31日現在)
売上高:243億7500万円(2025年3月期)
株式:東京証券取引所スタンダード市場に上場
HP:https://www.ohbsn.com/holdings/
主な事業
・放送事業(新潟放送)
・システム関連事業(BSNアイネット)
・建物サービスその他事業(BSNウェーブ)
主要子会社
株式会社新潟放送、株式会社BSNアイネット、株式会社BSNウェーブ ほか
【今回インタビューに答えてくれたのは・・・】
坂田 源彦さん(写真中央)
株式会社BSNメディアホールディングス ビジネス開発局次長 兼 ビジネス開発部長
株式会社BSNアイネット執行役員 成長戦略室長
文部科学省「アントレプレナーシップ推進大使」としても活動し、地域のスタートアップエコシステム構築に尽力。「地域と共に持続的に成長する」をテーマに、放送とITの融合による新しいビジネスモデルを模索している。
神田 優さん(写真左)
株式会社新潟放送 経営戦略局経営戦略部
5年先、10年先の会社のあり方を考えながら、自治体や高等教育機関との連携協定の推進、部署を横断した新規事業の企画・推進を手がける。
丸山 寛之さん(写真右)
株式会社BSNアイネット 成長戦略室 共創事業担当 エキスパート
オープンイノベーションを担当し、スタートアップとの共創事業を推進。公共から民間まで幅広い顧客基盤を活かした実証実験フィールドの提供や、新しい価値創造に取り組む。
(以下、インタビュー形式で掲載)
―御社の事業内容について教えてください。
神田さん:新潟放送は72年の歴史を持つ、県内唯一のテレビとラジオ両方を運営する民間放送局です。テレビでは「水曜見ナイト」「土曜ランチTVなじラテ」「BSNNEWSゆうなび」などの番組を制作し、ラジオでは朝6時台から夕方6時台まで、ほぼ12時間にわたって自社制作番組を放送しています。
番組制作においても高い評価をいただいており、ギャラクシー賞や民間放送連盟賞など国内の賞はもちろん、海外(ワールドメディアフェスティバル)でも金賞を受賞するなど、質の高いコンテンツ制作を続けています。なじラテは同時間帯視聴率が3年連続1位で、TVerの再生回数でも全国上位に入ることがあるなど、多くの県民の皆様にご愛顧いただいています。
丸山さん:BSNアイネットは、自治体や学校などの公共分野から医療・福祉分野、一般企業まで、業種を問わず全ての領域のお客様に対してITソリューションをトータル提供している会社です。北海道から沖縄まで全国の自治体との取引実績があり、地域の課題を技術で解決することに長年取り組んできました。
坂田さん:BSNメディアホールディングスは、この新潟放送とアイネットを中核として、情報産業として地域に寄り添い、様々な課題を解決していくことを目指しています。単なる放送局でもなく、単なるIT企業でもない。メディアとテクノロジーの力を掛け合わせることで、新潟を元気にできる新しいビジネスモデルを構築したいと考えています。
―直近で一番新しい事業や取り組みについて教えてください。
神田さん:放送局としての役割はそのままに、さまざまなメディアを使って新潟を元気にできる取り組みを進めています。具体的には、自治体様との地域包括連携協定の締結を通じて、それぞれの地域課題と向き合い、新しい価値を創出する取り組みです。
多くの自治体が共通して抱える「交流人口の増加」というニーズに対して、地域の伝統行事のライブ配信やインターネット連動企画など、新潟県域のローカルメディアであっても県域を超えた発信ができるのではないかと模索しているところです。
昨年4月に新潟国際情報大学、9月には長岡技術科学大学とも協定を締結し、学生の皆さんだけでなく、高等教育機関や自治体とも連携した地域活性化活動を展開しています。
丸山さん:BSNアイネットでは、オープンイノベーションによる新しい価値創造に注力しています。最近の事例では、新潟大学と共同で論文を分かりやすく解説するWebサイトを制作しました。これはInnoLaboNIIGATAにも登壇した、ドコドア株式会社にUI・UX制作をご協力いただいた連携事例でもあります。
https://www.bsnnet.co.jp/news/info/2999282.html
また、青森県、東北電力ネットワークとの3者連携による、電力スマートメーターを活用した水道自動検針の実証実験や、兵庫県と連携したAIを活用したケアプラン作成支援システムなど、テクノロジーと社会課題を組み合わせた取り組みを積極的に行っています。
https://www.bsnnet.co.jp/news/release/2814038.html
https://www.bsnnet.co.jp/news/release/2807317.html
―スタートアップとの連携事例はありますか?InnoLaboNIIGATAへの参加を通して期待していることは何ですか?
神田さん:今年6月に株式会社EIGHTSと戦略的提携を締結しました。きっかけは、2024年度に新潟国際情報大学との連携プロジェクトで防災をテーマにした縦型ショート動画を制作することになったことです。
実は、放送局でありながら縦型ショート動画の制作経験がなく、その知見をEIGHTSさんからお借りしたいということから始まりました。学生さんが企画から構成、取材、編集まで全て担当し、EIGHTSさんには技術的なアドバイスをいただく形で、7本の動画を制作しました。
例えば、津波警報が出た際に「高いところに逃げろ」と言われても、実際どのくらい時間がかかるのかという素朴な疑問から、9階建ての建物の階段を実際に登ってみる動画を作りました。若い学生でも9階まで到着するのに2分30秒かかることを実証するなど、とても実践的な内容になりました。
この経験を通じて、私たちの足りない部分をスタートアップの強みで補完してもらうことで、本当に新しい価値を生み出せることを実感しました。
https://www.ohbsn.com/corporate/pickup/rel20250610.php
InnoLaboNIIGATAへの参加については、まさにこうした出会いの場として大きな期待を寄せています。私たちもまだまだ至らないところも多いので、スタートアップの皆さんの尖った特徴的な強みで、もし私たちの取り組みにマッチするものがあれば、ぜひ積極的にお話しさせていただきたいと思います。
―今後、スタートアップと一緒に特に注力して取り組んでいきたいことは何ですか?
神田さん:防災に関しては、平時から備えを進めることを呼びかける「防災・減災プロジェクト」を通年で実施しています。また、子どもたちの健やかな成長を見守る「キッズプロジェクト」、県民の健康寿命を延ばす「ケンジュプロジェクト」など、様々なテーマに取り組んでいます。
これらのプロジェクトの枠内でも、派生する形でも構わないので、スタートアップの皆様と一緒に取り組めれば嬉しいですね。一緒にコンテンツを制作することもそうですし、ノウハウを提供いただくことも含めて、幅広い連携を考えています。
丸山さん:既存の事業領域にこだわらず、社会環境や技術の変化に対応した新しい分野で、地域全体やお客様に対して価値を提供していきたいと考えています。スタートアップが持つアセットと弊社のアセットを組み合わせることで、化学反応として新しい価値が生み出されるのであれば、積極的にご相談いただきたいです。
―実際に、共創の相談のレベル感はどの段階から受け付けていますか?
丸山さん:これから作りますというものよりは、ある程度の形やモックアップでもいいので「こういうことができそう」という段階でご相談をいただけたら、ありがたいなと思います。その方が、実際にお客様にお見せしたときにリアルにイメージしていただけたり、連携を検討する上でもお互いにゴールが描きやすいですね。
―御社からスタートアップに提供できるアセットは何ですか?
神田さん:テレビやラジオ、SNSを通じて、年代を問わず幅広い世代に届くリーチ力が私たちの大きなアセットです。72年間培ってきた自治体や民間企業との繋がり、そしてTBS系列の全国ネットワーク(JNN系列28局)も活用できます。新潟の地域課題へのアプローチは他の地域へも応用できることが多いと思うので、全国に向けてサービスを展開する際の後押しもできます。
特に新潟放送の特徴は、県内唯一のテレビとラジオ両方を持つ放送局であることです。テレビとラジオを組み合わせたクロスメディア展開や、若いスタートアップの皆さんの感性で新しいアイデアを一緒に考えられると嬉しいですね。
坂田さん:72年分の映像アーカイブも貴重なアセットです。新潟の自然災害、人々の生活習慣、文化など、膨大な映像記録を保有しており、これらをデジタル化して地域活性化に活用する可能性もあります。昭和から令和にかけての新潟の変遷を記録した映像は、他では手に入らない貴重な資料です。
丸山さん:BSNアイネットからは、自社開発の映像伝送システム「MULT-i(マルチアイ)」をご紹介できます。これは複数カメラを使って、表情と手元の動きを同時に伝送できるシステムです。学習塾では、生徒がどこでつまずいているかを表情とノートの書き方から判断できるため、より効果的な指導が可能になります。
そのほかに、力加減を伝送するということも実証実験しており、職人の技能伝承などにも活用できるか模索しています。
https://www.bsnnet.co.jp/service/online-education.html
それから、事業領域の広さは大きな強みです。公共から民間、医療・福祉まで幅広い分野にネットワークを持っているため、様々な場面で実証実験のフィールドを提供できる可能性があります。
―御社が描く「新潟の未来」について教えてください。
坂田さん:最も重視しているのは、「日本にフィットする持続的な企業と社会の成長モデル」を新潟で実現することです。人口減少などのネガティブな話題が多い新潟ですが、実際に住んでいると新潟の魅力や強いところを強く感じます。
私たちの70年余りのネットワークを活用しながら、自治体、民間企業、そしてスタートアップと組むことで、新潟を元気にしていきたい。新潟放送もBSNアイネットも、新潟県民の皆様によって活かされている企業ですから、新潟のために、より元気になるよう取り組んでいくのが使命だと考えています。
最終的には、新潟の若者が「新潟に残りたい」「新潟に戻ってきたい」と思える土壌を作ることが目標です。一度外に出た人も、新潟でこんなことができるんだという選択肢があることを示したい。私自身も新潟にIターンで来た人間として、新潟の可能性を全国に発信し続けたいと思っています。
―最後に、スタートアップに向けてメッセージをお願いします。
坂田さん:新潟の経済発展に向けて持続的に取り組んでくれる、同じ目線を持ったスタートアップと出会いたいと考えています。テーマは人口減少でも、子育てでも、技能伝承でも何でも構いません。重要なのは、新潟という場所を自分たちの企業も持続的に成長できる場所として、真剣に捉えてくれるかどうかです。
”地域課題の解決”を目指して動いていることが、実際に地域にどういう影響を与えているのか、果たして本当に解決されているのかまでしっかり追っていきながら、スタートアップをはじめとした仲間を集めているところです。
私たちも地元メディア企業としての実績と人材、ITとしてのソリューション力を活用して、本気で地域のことを考えてくれるスタートアップを全力で応援します。露出を増やしたり、地元学生への影響を通じて、新潟に残る、戻ってくる人材の育成にもつなげていきたいと思います。
神田さん:私たちの至らない部分を、スタートアップの皆さんの特徴的な強みで補完していただければ、必ず新しい価値が生まれると確信しています。防災、子育て、健康など、様々なテーマでご一緒できることを楽しみにしています。
丸山さん:私たちの成長とスタートアップや地域企業の成長を連動させることで、地域全体の好循環を作りたいと考えています。一つ一つの歯車が大きな推進力となって、新潟全体が盛り上がる活動につながっていけば理想的です。
【事務局からひとこと】
「新潟をポテンシャル止まりにさせない。あとは動くだけ」圧倒的な熱量とともに、放送とITという異なる強みを融合させて新潟の未来を切り拓こうとする坂田さんたち。「真剣に地域と向き合い、共に成長していこう」という共創マインドで、地域課題解決に挑むBSNメディアホールディングスとの事業連携に興味のあるスタートアップはこちらまで!
2025年9月12日取材
取材・編集 井上佳純
撮影 星野静香